どうも、会社に嫌がらせを受けながらも、労災申請したゴローです。
今回は、同じような境遇で悩んでいる方向けの記事になります。
「労災申請したら、会社から嫌がらせされるんじゃないか」
「労災申請したら、会社に迷惑がかかるんじゃないか」
これから労災申請しようとしている方は誰ものが同じような不安を抱えていると思います。
僕も労災申請をする前は同じように感じていましたが、本来このような心配をする必要はありません。
なぜなら、労災申請を妨害したり、労災を理由に従業員に嫌がらせをすることは法律で禁止されているからです。
しかし、現実には会社側が正しい知識や実務経験がなく、労災というだけで嫌がっているケースや、責任逃れのために恐れて、違反行為を行うこともあります。
この記事では、僕の経験を踏まえて、会社が労災申請を嫌がる理由と違法行為を解説しますので、ぜひ、読み込んでください。
そうすれば、きっと、心配もなくなり、労災申請しようと思えるはずです。
労災に関する法律
労災に関しては、4つの法律が大きく関わってきます。
労働者災害補償保険法
この法律では、労働者災害補償保険の加入や各給付金に関する法律です。
労働安全衛生法
職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境のづくりとその促進を目的とする法律です。
労働基準法
労働者の保護を目的とする法律です。最低労働基準の事項やそれを違反した場合の罰則について定められています。
労働契約法
労働契約に関する基本的な事項について定められています。
会社が労災に加入する理由
1人以上の労働者を雇用していれば、全労働者を対象に加入することが法律で義務付けられているからです。
対象とならない会社は、5人未満の労働者を使用する個人経営の農林水産の事業だけです。
この事業も強制加入ではなく、労働者が望めば加入できる任意加入制度の対象となっています。
この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。
対象となる労働者の範囲
経営者や役員を除く、全労働者です。
つまり、雇用形態は関係ありませんので、正社員だけでなく、契約社員や派遣、パート、アルバイトも対象です。
労災の加入が義務付けられている意味
労働者を雇用している使用者(会社)は、災害補償責任を負っています。
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
この責任を労働災害補償保険に加入することで担保できます。
つまり、仕事が原因で従業員がケガや病気になってしまった場合に、会社は働けなくなった日の給料や治療のための費用を負担しなくてはならないのですが、会社の経営状況等により、被災した従業員が十分な補償を受けられなる場合があるため、法律によって加入を義務付け、速やかに従業員への補償を行うことができるようになっています。
保険料の支払い
加入が義務付けられている意味から考えられるように、会社が万が一のために利用できる保険ですので、保険料は会社が全額負担します。
保険料率は業種等により異なり、労災事故の発生の可能性が高い事業は高い料率になります。
あなたの会社が労災に加入しているかどうか確認する方法
厚生労働省の「労働保険適用事業場検索」でだれでも確認できます。
加入していなかった場合
もし、あなたの勤めている会社が労災に加入していなかったら、すぐに労働基準監督署に相談しましょう。
未加入であったからといって、あなたが労災申請できなくなったり、給付を受けられなくなるわけではありませんが、ケガや病気が原因が仕事であるかどうかを判断する前に、会社が加入対象であるかどうかやあなたが従業員であることなどを証明するところからスタートしなくてはならないので、通常より手間や時間がかかります。
未加入の会社へのペナルティ
過去の期間までさかのぼって、保険料を徴収されます。
さらに、追徴金も支払わなくてはなりません。
支払いがない場合は、財産の差し押さえ等が行われます。
未加入の期間に発生した労働災害保険の給付の全額または一部が徴収されます。
キャリアップ雇用などの雇用関係の助成金が受給できなくなります。
会社が労災申請を嫌がる理由
ここまで見てきたように、会社が労災に未加入でない限り、嫌がる理由はないように見えます。
むしろ、会社は万が一のために、保険料を払って加入しているのだから、労災を使って、従業員への補償を行えばよいのではないでしょうか。
しかし、実際には、労災で補償できない部分の会社の責任や、労災申請後の労働基準監督署の調査、今後の事業に影響が出る可能性などを恐れて、嫌がります。
休業補償を補填したくない
労災の休業補償給付では、給与の80%しか補償されません。そのため、残りの20%分に関しては会社が補填をする必要があります。
安全配慮義務違反で損害賠償請求されたくない
会社は従業員が安全で健康に働くことができるように配慮する義務を負っています。
ケガや病気の原因が会社側の安全配慮義務違反であれば、責任を追求され、損害賠償されるリスクがあります。
安全配慮義務は、2000年の電通過労死事件の最高裁で初めて認められ、2008年5月に労働契約法第五条に明文化されました。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
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労働基準監督署に調査されたくない
労災を申請し、受理されると、労働基準監督署が会社に対して、必要書類の提出や会社に立ち入って、調査を行います。
この調査では、従業員の労働環境を徹底的に見られますので、労災の事故以外にも、労働基準法違反が見つかる可能性があります。
労災認定による事業への影響を受けたくない
行政へ入札を行い、事業を受託している場合に労災事故が認定されると、入札資格の停止を受ける可能性があります。
労災保険の保険料率が上げたくない
労災保険を利用した場合には、業種や労働者の人数によって保険料率が上がる可能性があります。
業種によって、災害発生のリスクを考慮した制度になっており、労災保険のメリット制といいます。
休職中の従業員を解雇したい
病気やケガになると急に退職を迫るような経営者もいますが、労災で休んでいる従業員を解雇することは法律で禁止されています。
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
会社が労災を嫌がる理由に共通するもの
労働者を雇用している使用者(会社)としての無責任と自己の利益のみを優先したいという勝手な考えです。
そのため、労災申請を妨害したり、労災の調査で事実と異なることを報告することは犯罪です。
労災かくしは犯罪
厚生労働省のホームページでもはっきりと「労災かくしは犯罪」として、厳しく処分をしています。
労災かくしを行うと、会社は書類送検される可能性があります。
書類送検されると、いわゆる「ブッラク企業リスト」と呼ばれる厚生労働省が公表しているに労働基準関係法令違反に係る公表事案に掲載されます。
最新の平成31年3月1日~令和2年2月29日公表分では、51件が労働安全衛生法100条違反で送検されています。
また、送検後に起訴されると50万以下の罰金刑となる可能性があります。
厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。2 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、登録製造時等検査機関等に対し、必要な事項を報告させることができる。3 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。労働安全衛生法 第百二十条 5
第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
労働者側のリスク
会社から労災ではなく、健康保険を使ってくれと言われても、労災の可能性があるのであれば、適切に労災申請を行いましょう。
あなたのケガや病気が労災であるかどうかの判断は、労働基準監督署が行います。決して、会社ではありません。
もし、労災申請をせずに、後々、別件で労働基準監督署の調査が入り、労災かくしが発覚する可能性もあります。
その際は、あなたも加担したことを問われる可能性もあり、労災なのに健康保険を利用するのは、詐欺行為になる可能性もありますので、絶対にやめましょう。
(誤って健康保険を利用してしまった場合は、あとから精算手続きすることが可能です)
しかし、精神障害の病気の場合など、仕事と病気の発症の因果関係がはっきりしない場合は、加入している健康保険組合や協会に相談の上、労災申請をしながら、健康保険の傷病手当金を受給したり、病院や薬局で健康保険を提示して3割負担で受診することも可能です。
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労災申請後に会社から嫌がらせを受けた場合
労災申請をするというと会社が認めず、申請書の書類にある事業主証明への記載を拒否するかもしれませんが、拒否されても、労災申請をすることができますので、安心してください。
また、労働基準監督署に申告したことに対する労働者に対する報復行為は、法律で禁止されています。
事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
まとめ
労働者災害保険は、本来、仕事でやむなくケガや病気になってしまった労働者に対して、速やかに補償できるように整備されたものであり、会社側も趣旨を理解して利用すれば、万が一の備えとして利用できるはずです。
しかし、現実は、会社の無責任で身勝手な自己利益の追求により、妨害や嫌がらせが起きています。
このような行為は責任回避の方便です。
たとえば、
「パートだから労災は使えない」
「このケガは労災の対象ではない」
「給料をあげるから、健康保険で治療してほしい」
このような発言はこの記事で読んだ知識があれば、すぐに通用しないことがわかると思います。
また、労災申請に協力的でない会社では、迷惑がるそぶりで、申請の手続きをしてくれないかもしれません。
しかし、会社は労働者死傷病報告書を速やかに労働基準監督署に提出しなくてはなりません。
さらに、会社はあなたに対して健康で安全に仕事をできる環境をつくる義務を負っているのですから、迷惑がる事自体が間違っています。
最悪、会社側が協力的でなくても、自分で労災申請できますので、粛々と労災申請を行ってくださいね。
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最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この情報であなたが新しい一歩を踏み出す一助になれば幸いです。