退職勧奨と解雇を経験してモヤモヤしたことがあるゴローです。
コロナウイルス感染拡大の影響で退職勧奨や解雇に不安に覚える方が多いのではないでしょうか。
実際に、コロナ解雇としてタクシー会社のロイヤルリムジン社の約600名の大量解雇やテーマパーク事業を行うハウステンボスの派遣切りが行わている報道が出ています。
たとえ、あなたが退職勧奨や解雇を告げられても、応じる必要はありません。
日本は解雇に対する厳しい法規制があります。
このページを読みば退職勧奨や解雇に負けない知識を身につけることができ、万が一、解雇や退職勧奨にあっても自分や家族のために冷静に判断できるようになるはずです。
コロナ解雇の実例
ロイヤルリムジンの大量解雇
2020年4月8日にタクシー会社のロイヤルリムジンが約600名に対して同月7日付けでの一斉解雇を通告。
翌日、従業員に退職同意書へのサインを求め、解雇ではなく、合意退職であると会社は主張。
従業員と会社側で主張が異なり、訴訟に発展。
参考:新型コロナを理由にした「ロイヤルリムジンタクシー」大量解雇事件 (4/12)
ハウステンボスの派遣切り
ハウステンボスに務める派遣社員約30名が期間満了前に事前通告もなく、契約解除される。
解雇と合意退職の違い
会社都合による「解雇」と退職勧奨による「合意退職」の違いについて解説します。
解雇
解雇とは、従業員の合意なしに、一方的に会社が労働契約を解除することです。
日本では、労働契約法16条で不当解雇が規制されています。
労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
正当な解雇理由については、咲くやこの花法律事務所さんのページをご参考ください。
合意退職
合意退職は、従業員と会社が退職に合意して労働契約を解除することです。
転職や家族の介護のためなどで退職する場合も合意退職になりますが、会社からの働きかけである「退職勧奨」が行われて、従業員が合意して退職した場合も「合意退職」になります。
会社が解雇ではなく、合意退職にしたい理由
僕が合意退職にされた理由も、ロイヤルリムジン社が解雇ではなく合意退職を主張する理由も、同じだと思います。
理由は、解雇ではなく、合意退職することで金銭的なメリットを会社が享受するできるからです。
労働基準法16条で解雇規制がされている趣旨も会社が金銭的なメリットを優先して、従業員をむやみに解雇しないようにしているのです。
具体的に僕の実例とロイヤルリムジン社の例から具体的な金銭的メリットを紹介します。
僕の実例
病気休職中に「(早く戻れないことに対して)戻る気あるのか」「やめる気はないのか」と何度も確認される。
会社から「会社の経営が苦しいので、今後の雇用をどうするか考えなくはならない。どうするかつもりか考えて返答するように。」と言われる。
退職強要のプレッシャーと解雇の危機を感じ、総合労働相談センター等に相談し、退職勧奨に応じないようにアドバイスを受ける。
退職勧奨の面談で「復職してもあなたのポジションはない」「復職後の給与は減額する」「大きな会社ではないため、労働環境は整えられない」と言われた上で、合意退職を勧められる。
会社の対応に落胆するが、退職する意思がないことを伝えて、面談を終える。
数カ月後、自己都合退職の離職票が届く。
裁判で会社都合の解雇に訂正することを合意。
僕の会社が合意退職で得ようとした金銭的なメリット
僕が退職勧奨の面談で即日合意退職した場合の会社の金銭的メリットを説明します。
1.解雇予告手当を支払わなくてよい
解雇する場合は30日以上前に従業員に予告通知する必要があり、それより前に解雇する場合には、解雇予告手当を払わなくてはなりません。
そのため、僕が即日合意退職していれば、1ヶ月分の給料を支払う必要がなくなっていました。
2.会社負担分の社会保険料等を支払わなくてよい
会社が全額負担していた労災保険料や半分負担していた年金・健康保険・雇用保険などを支払う必要がなくなります。
3.バックペイを支払うリスクが低くなる
合意退職した後に会社と退職理由を争うのは難しくなります。
なぜなら、合意する意思がなかったことを証明しなくてはならないからです。
仮に合意退職ではなく不当解雇になった場合は、バックペイといって、退職日に遡って、給与を支払う必要が出る可能性があります。
4.雇用関連の助成金を引き続きもらうことができる
助成金を申請してから半年以内に解雇した従業員がいる場合には、雇用関連の助成金を受給することができなくなります。
例えば、キャリアップ雇用の助成金は有期雇用契約者を正社員にすると最大で1人あたり72万円が支給されます。
1事業所あたり20人まで利用できますので、72万円×20人=1,440万円が最大です。
解雇により最大1,440万円の受給機会損失を防ぐことができます。
ロイヤルリムジンが合意退職で得ようとした金銭的なメリット
600名を合意退職だと主張するロイヤルリムジン社の例に金銭的なメリットがいくらぐらいになるか計算してみたいと思います。
バックペイは今後の状況もわからないことと、助成金については利用していたかどうかわかりませんので、解雇予告手当と社会保険料等からざっくり算出します。
1.解雇予告手当
解雇予告手当=直近3ヶ月の平均賃金×30日分
ロイヤルリムジンの求人情報によれば、以下のように歩合給もあるため、35万円を従業員の方全員の平均賃金として仮定します。
平均賃金には、歩合給、家族手当、通勤手当(通勤定期券代)、年次有給休暇の賃金、割増賃金、昼食料補助等も含めて計算します。
◆未経験者
入社3ヶ月間【保証給/月給35万円】
4ヶ月目以降は?→月給22万円+歩合給等
◆経験者
(1)入社3ヶ月間【保証給/月給35万円】
4ヶ月目以降は?→月給22万円+歩合給等(2)【※一時金20万円支給】+月給22万円+歩合給等
※一時金は入社月のみ支給/給与は(1)(2)選択制《月収例》
未経験/月収40万円以上(月給22万円+各種手当+歩合給)
※隔日12勤務の場合経験者/月収50万円以上(月給30万円+各種手当+歩合給)
※隔日12勤務の場合
35万円×600名=2億1000万円が解雇予告手当になります。
2.社会保険料等
従業員の平均賃金を35万円と想定して、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険を合算した金額を算出します。
健康保険料
令和2年保険料額表によれば、月給35万円の場合は33558円となり、労使折半のため、月額16,779円/1人あたりが会社負担。
厚生年金保険料
令和2年保険料額表によれば、月給35万円の場合は62,220円となり、労使折半のため、月額31,110円/1人あたりが会社負担。
雇用保険料
令和2年によれば、雇用保険料の事業主負担の6/1000のため、月額2100円/1人あたりが会社負担。
労災保険料
労災保険料は業種ごとに料率が設定されています。最新の労災保険料表によれば、交通運輸業は4/1000のため、月額1400円/1人あたりの全額が会社負担。
社会保険料等の小計
従業員一人あたりの月額の社会保険料 51,389円
従業員数 600名
期間 1ヶ月
小計 51,389円×600名×1ヶ月=30,833,400円
合計
解雇予告手当と社会保険料等の支払い額を合算すると約2億4000万円になります。
これだけの金額が即日合意退職に合意されれば、金銭的メリットになる予定でした。
逆に言えば、コロナウイルスの影響で休業せざる得ず、基本給35万円の従業員を600名維持するために必要な金額とも言えます。
実際には、オフィスの家賃などの経費も発生するため、これ以上の維持費がかかっていますが、
コロナウイルスに関しては国が雇用調整助成金の特例措置を出していますので、会社はそういった助成金等を活用して雇用を維持することが必要です。
合意退職の退職勧奨をされた場合
会社も厳しいのかもしれませんが、従業員であるあなたが抱え込む必要はありません。
退職勧奨を応じる義務もありませんので、退職意思がないのであれば、はっきりと断りましょう。
しつこく退職勧奨するなど退職を強要することは違法です。
会社によっては、休業要請なのか、解雇なのか、退職勧奨なのかあいまいな表現をするかもしれません。
後々のトラブルにならないように書面に残しておきましょう。
解雇をされた場合
解雇は普通解雇・懲戒解雇・整理解雇に分類されますが、どれも正当な理由がなければなりません。
コロナウイルスの影響による経営悪化の場合は、整理解雇になります。
いわゆる「リストラ」ですね。
もし、リストラされそうになったら、整理解雇に正当化される状況なのかどうか判断するために労働事件に強い弁護士にすぐに相談しましょう。
労働事件を専門に扱っている弁護士が所属している日本労働弁護団が今回のコロナウイルスに関する労働事件のQ&Aを掲載していますので、ご参考ください。
解雇など会社都合で退職した場合に利用できる制度
自己都合退職ではなく、解雇や退職勧奨に応じて、退職した場合に利用できる制度を紹介します。
1.雇用保険
失業した時に給付される失業保険は、自己都合退職か会社都合退職かによって、支給開始時期と給付日数が異なります。
自己都合退職では、待機期間が3ヶ月と7日間ありますが、会社都合なら待機期間が7日間になりますので、実質的に退職日から1ヶ月超で初回支給日を迎えます。
※離職票が届いて、ハローワークで手続きしてから待機期間がスタートします。早く手続きすれば、支給日も早まりますが、最速でも1ヶ月程度はかかります)
また、給付日数は失業手当に日当が出る期間のことです。給付日数は雇用保険に加入していた期間と年齢により異なります。
自己都合なら加入期間が10年未満の場合は90日、20年以上で最大150日です。
会社都合は加入期間と年齢が高いほど、給付日数は高くなり、最大で330日です。
2.社会保険料
失業すると、会社で加入していた厚生年金を国民年金に、健康保険協会や組合から国民健康保険に切り替える必要があります。
国民年金や国民健康保険では、失業した場合には、配偶者の所得等に応じて免除や支払い猶予を受けることができます。
記事の最後に免除・猶予制度に関して紹介したリンク先を紹介しています。
解雇でなくても失業した場合に利用できる制度
1.生活確保給付金
失業して家賃の支払いが困難になった場合に申請できる制度です。
申請先はお住まいの地域の生活困窮者自立相談機関です。
世帯所得などから上限はありますが、申請をして支給条件を満たせば、あなたのかわりに家賃の振り込んでくれます。
不足分は自分で支払う必要があります。
申請したい場合は、お住いの地域名(当道府県や市区町村)と生活確保給付金で検索してみてください。
2.生活福祉資金貸付制度
所得の少ない世帯等に無利子または低利子で資金の貸付を行ってくれる制度です。
今回のコロナウイルスでも条件が緩和されていますので、お住いの地域名(当道府県や市区町村)と生活福祉資金貸付制度で検索してみてください。
コロナ解雇や退職勧奨に負けない知識
1.退職勧奨に応じる必要はない
2.しつこい退職勧奨は違法
3.会社があいまいな表現をしたら、解雇・退職勧奨・休業なのかはっきり確認する
4.解雇や退職勧奨の理由を書面で残す
5.解雇は正当な理由がないと認められない
6.しつこい退職勧奨や解雇にされても諦めずに弁護士に相談しよう
7.相談先は労働事件に強い弁護士がオススメ(弁護士でも専門があるため)
8.退職勧奨に合意する場合でも自己都合退職ではなく、会社都合の合意退職であることを要確認
9.会社都合の合意退職なら、経済的なメリットが受けることが可能(解雇でも可能)
10.会社は人員削減ではく雇用調整助成金などの活用して雇用を維持することが優先
11.突然の失業にあった場合には、生活を維持するための生活確保給付金や生活福祉資金貸付制度も検討
解雇と退職勧奨の予防演習のススメ
知識を得ても、シュミレーションしなくては予防になりません。
ここまでの情報を利用して、自分自身のケースに当てはめて未然の予防演習をしてみてください。
もし、足りない情報があれば、以下のリンクを参照してみてください。
きっと、防止につながる情報があるはずです。
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最後までご覧いただき、ありがとうございます。
ここでの情報があなたが新しい一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。